「9月1日がイヤだなって思ったら、自殺するより、もうちょっとだけ待っていてほしいの」
樹木希林さんが若者に送るメッセージ
「今、生きづらさ」を感じている若者たちに樹木希林さんが届けた想い
樹木希林さんは、数々の賞を受賞している大女優ですが、過去のインタビューでは、幼少期は無口だったことや、役者になってからも「全然、必要とされない役者」だったと告白していました。亡くなる直前、「生きづらさを抱える人たちに向けてメッセージを頂けませんか」とお願いをしたところ、がんと闘病しながら、いのちに向き合っている樹木さんからファクスが届きました。「自分で命を絶つことだけはやめようと生きてきた」。記されていた言葉から、樹木さんの思いをたどります。
昔からの本を読むと
およそ 同じことを言っている
自殺した魂は 生きていた時の
苦しみどころじゃ ないそうだ
本当かどうかは わからないけど
信用している
私は弱い人間だから
自分で命を絶つことだけは
やめようと 生きてきた
こんな姿になったって
おもしろいじゃないKIKI KILIN75才
(樹木さんから届いたファクス)
ファクスを書いてくれる前、電話口で樹木さんは、次のように話してくれました。
「ずっとずっと考えていて、お返事が遅くなっちゃったの。ごめんなさいね。どうしたら伝わるのかしら。本当に無力よね、まったく書けないの」
その向こうに多くの、いままさに苦しんで、悩んでいる若者が実際に見えているかのようで、「どんな言葉が届くのかしら」と途方に暮れた様子でした。
「死に向かっている人間は、考えの中に入り込んでしまって、どうしたら伝わるのかわからなくなっちゃうのよね。国は何か支援をしているのかしら」
一切の妥協をせず、若者へのメッセージに向き合ってくれた樹木さんの口調が突然変わった瞬間がありました。きっぱりと「でも、死んだ後の世界はすばらしい、というふうに、私は捉えていないの」と言ったのです。
「楽になるっていうでしょ。私はいろんな本を読んできたけど、生きている時より大変らしいのよ、脅しみたいになっちゃうけどね」
そこからの樹木さんは晴れ晴れとした声でした。
「じゃあ、今日中にファクスをペラっと1枚送りますから。使うかどうかはそちらで決めて。あとはお任せします。原稿料はいりません」
こう矢継ぎ早に話して、電話を終えてしまいました。そして本当にその日のうちに、筆書きで自画像入りのファクスが1枚、届きました。
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『生きづらさを抱えるきみへ』
著者:withnews編集部
2014年に朝日新聞社がスタートしたニュースサイト「withnews」内の1コーナーが「#withyou」です。この#withyouは2018年4月に始まった「生きづらさを抱える10代」に向けた企画で、「いじめ」や「不登校」、「DV」などを経験したことのある著名人(タレント、ミュージシャン、YouTuber、クリエイター等)が自らの体験談をサイトに掲載したものです。その体験談をひとつにまとめたのが本書。新生活が始まる中、「学校に行きたくない」「死にたい」といった悩みを抱え苦しむ人に、著名人たちが「自分も学校にいかなかった」「自分も不登校生活をしていたけど、今はしっかりと生活できている」「学校に行くだけがすべてじゃない」「好きなことをずっとやり続けていれば大人になっても暮らしていける」といった“安心できる”提案をしています。学校や友達付き合いに悩んでいる人に“学校に行きたくなければ行かなくても全然大丈夫”“今の時代、生きていく道はたくさんある。自ら死を選ばないで”という輪を広げていくことをいちばんの目的とした一冊です。